Skyting stjerner1-6

は真剣な目で、手元にあるそれを見つめていた。そして最後の仕上げといわんばかりに震えそうになる手を叱咤し動かせば。
は完成したそれに満面の笑みをつくり、この喜びをいざ伝えようと台所から食堂へと向かった。
扉を開き食堂へと顔を出す。そして目的の人物、食堂の隅のテーブルに腰掛け一人枝豆の処理をしている彼を見つけると、彼のもとへと駆け寄る。
「グレミオさーん!」
辿り着く距離さえもどかしく感じ、は走り寄る途中で彼の名を呼ぶ。
その声で気が付いた彼ことグレミオは、自分の名を呼んだ彼女を振り返る。そして穏やかな笑みを浮かべた。
ちゃん。どうしかしましたか?」
「ああああのですね!」
やっとグレミオのもとまでたどり着いたは乱れた呼吸もそのまま、興奮した様子で話し出す。
「出来た!出来たんです!!!」
満面の笑みでそう告げた彼女に、最初は何のことか検討がつかず首を傾げたグレミオだったが、彼女が右手に持っているそれを見て納得したようだった。彼もまた彼女と同じように笑みを浮かべる。
「そうですか!よかったですね。こんな短時間で出来るようになるなんて、ちゃん、すごいですよ!」
グレミオの言葉に思わず上気しそうになる頬を頬をかくことで誤魔化し、首を横に振り否定する。
「違いますよ。グレミオさんの教え方が上手なんです。だって私、ずっとこれは出来ませんでしたから。」
そう言って彼女は右手に握っている物の一つを取り、それをぶら下げた。
ぶら下げられたそれは茶色く、薄い皮――ジャガイモの皮であった。長く伸びるそれをもう一度見て、は出来たんだとまた喜びに頬を綻ばせそうになった。

先日、半年間暮らしたドワーフの村を出てカクの街まで出てきただったが、職き口がなく困っていた。
そこでアレが戻ってくる前に、とそれなりに慌てて村を出てきたせいかそれとも始めての旅のせいもあってか、金に代える物もなく携帯食料さえ持ってくるのを忘れてしまっていたが腹を空かせていた所、助けてくれた少年がいた。
その少年の名をティル。世にも稀な、それこそともすれば畏怖すら抱いてしまうほど大変美しい顔立ちの少年であった。そんな彼はに食事をご馳走してくれただけでなく、の悩みまで真剣に聞いてくれ、さらには働き口まで紹介してくれたのだ。
そんな人の良い彼と共に働き口――解放軍の家事手伝いをすべく本拠地、トラン城に少年とともに向かったのだが、そこでは大層驚かされることになる。
なんとと同年代と思われお世辞にも強そうに見えない細身な彼は、解放軍のリーダーだったのだ。信じられるわけがなかった。何度もいうが、彼はと大して歳の変わらなさそうな少年であり、そしてと同じかそれ以上に細い体つきをしてるのである。そんな彼が大の大人たちの上に立ち、あまつ帝国軍に反旗を翻し、多くの民に支持されているなど―― けれどそれはどうにも真実らしく、は彼の言葉もあり、あっさりとこの城で雇われることになったのである。しかも当初から希望していた寝食以外に少量のお金も貰えると言うのだから としては何度少年に頭を下げればいいか。

そうして彼の紹介で軍師マッシュに紹介され雇用の決定もされた(むしろティルの独断であった感は否めない)後、そんな彼はマッシュにより部屋を追い出された。何でも彼はこっそりと城を抜け出していたらしい。 それでいいのか軍主と思わずは思った。事務処理が残っているティルは無理やりマッシュにより追い出され、残されたはマッシュにより軽い質問を受けた。主に出来ること、雇用条件などだ。その後は仕事の内容を簡単に説明され――というか朝昼晩の食事つくりと洗濯物をしてくださいとだけ言われ、 あとは丁度その時達のいた部屋、マッシュの部屋に訪れた長い金色の髪を後ろで束ねた、此方もまた顔立ちの整った優男にマッシュは詳しいことを説明してもらうように言ったのである。


金髪の優男の名をグレミオ、といった。彼は見る者を穏やかにさせるような優しい笑みを浮かべながらに城の案内、厨房、調理具の置き場、洗濯場、洗濯物は朝食と昼食の間に部屋に取りにいく、と一つ一つ丁寧に教えてくれ、そして困ったことがあれば何でも相談してくださいね、と起床時間を述べた後案内したに割り当てられた部屋の前で彼はそう告げたのだった。
そんな優しい彼に、は思わず一時でも解放軍に悪いイメージを持ってしまったことを心の底から詫びた。

その次の日、さっそく起床時間より大分早めに起き、はやる気持ちで台所へ行っただったが、すでに調理場に立っていた人物を見て驚いた。
グレミオだ。彼はのように半分瞼が落ちそうな状態ではなくはっきりと目が覚めているようで、を見ると少し驚いたような顔をしてから、早朝から綺麗な整った顔で爽やかな笑みを浮かべに挨拶をしたのだった。
朝食よりも大分早い時間ということもあって、彼とはいくつか会話をした。なんでも、彼は戦闘要員でもあるが、本拠地にいるときはなるべく他のメイドさん達と一緒に城の家事をしているのだという。しかも彼の包丁さばき、男性だというのになんと鮮やかなことか。軍師であるマッシュの部屋に訪れたりそんな彼に新人の自分の世話を頼んだこともあり、もしかして彼はメイドさん達の総締めかなんかではと思うである。
ちなみには、メイドではあるがメイド服なんてものは着ていない。自作の自信作、旅装束である。メイド服は今の軍に余計な費用を費やすことが出来なかった為ないしらしいがとしては非常にありがたかった。メイドといったものは見てるだけで十分目の保養だ。自分で着てしまったら着てる自分もそれを見てしまった人にもなんかもう申し訳ない気持ちになってしまう。さすがにエプロンはつけているが。
そうして談笑しつつ時々グレミオから指摘を貰い他のメイドさん達が来るまでに大体の朝食の下ごしらえを達は済ませていた。
するとその頃にはは美形で大人な男性ということを差し引いてもグレミオにすっかり懐いていたわけである。
優しくて、暖かな笑み、そして長い髪ということも加わってかには男であるはずの彼が母親のように思えてしまっていたのだ。
そんな彼に洗濯物、昼食を作り終わったあとは手ほどきを受けていた。あまりにも鮮やか過ぎる彼の包丁裁きに惚れ込み、が頼んだのである。
ジャガイモの皮を切らすことなく一剥きしてしまう方法を。
ドワーフの村で家事をしていたとしても、それまでは調理実習などといった機会がない限り料理をしたことのないは当然ながら本格的に料理を教わったことはない。
そこで本格的にやろうとしても教えてくれるのは何故か手先は器用なのに料理下手なドワーフ、元の世界の料理本、あとはドワーフ達が持ってきたレシピぐらいである。
そのせいか、実際の手本を見たことのないは未だジャガイモの皮を一度も切らすことなく剥いてしまうことができていなかった。それなりに上手くはいくのだが――・・・・形によっては何度も切ってしまう。
いまだ出来たばかりの軍は無駄な費用を沸くことが出来ないというし、ジャガイモの皮でもなるべく実を切らず、薄くしてしまいたい。それにその日の昼になってわかったのだが家事手伝いの人員も不足がちらしく、ならば作業を早く進めるため一剥きしてしまうことが出来たら――と考えたのである。
思いついたら即行動。戦闘員でもある彼が忙しいであろう事は承知の上で、は土下座せんばかりに頼み込んだ。年若い少女であるはずの彼女の謎のじゃがいもの皮むきへの情熱に、若干引いたグレミオだがしかし人の良い彼は二つ返事で頷いた。

そして仕事に一区切りがつく洗濯物をしまい込んだあと、それは実施された。
20分程懇切丁寧に見ていてくれたグレミオだったが、あとは練習あるのみと察したは彼に休憩をとってほしいと頼んだ。なにしろが知る限りグレミオは働きっぱなしである。頼んだ身であるものの、こうして自分にずっと面倒を見てもらい悪いと思ったのだ。
だからこそ、彼女はグレミオが特に用事はないからといって首を振っても断固として許さず彼を調理場から押し出したのである。 だったら食堂ででもお茶を飲んでいてください、と。
グレミオも彼女のどうしても引かない様子を悟ったのか苦笑してからなら何かあったら呼んでください。食堂にいますから。と伝えて彼女に押されるまま調理場から出て行ったのである。
そうして一人で練習し費やしたジャガイモは既に数十個。まぁそれは夕食に使うのことになっており無駄にならず良いのだが。

がグレミオの元に向かったのは、特訓をし始めて約40分後であった。
グレミオ手元には新聞紙と枝豆、テーブルの上にはボールとの言った通り休憩していたわけではなさそうだが、は今は咎めないでいた。
自分が剥いたジャガイモの皮を愛しそうに見つめる。昔から不器用というわけではなく、だからといって器用というわけではない彼女はこの起用の部類に入るジャガイモ一剥きが出来て嬉しく仕方がないのである。
「私、これ記念にとっておきます。」
ちゃん・・・それは虫が来てしまいますから止めましょうね。」
呆れたようにグレミオはそう言うがその顔は穏やかだ。そして手に持った枝豆と膝の上にある新聞紙をテーブルの上に置き、エプロンで手を拭いてからと頭にそって手を置く。
「なんにしても、よく出来ました。ちゃん。」
にっこりとそう言われ、男性の筋張った手ということや彼が武器を扱ってることもあり固い手の平が彼女の頭を撫でる。
しかしその手つきは柔らかく、暖かく。頭を撫でられるだなんて行為は幼少以来されてなく、されてもいい歳だというのに恥ずかしいだけとしかそれまでは思っていたのだが。
このときばかりはは込み上げてくる気持ちのまま笑みを作った。



***


その日の夕食のテーブルには、ものの見事にジャガイモ料理が並んでいた。
席に付いたティルは数々の芋料理に首を傾げる。いつも栄養にうるさいグレミオがあれこれと多種多様な料理を作るというのに。今日はジャガイモが安かったのだろうか。
ほどなくして遅れて食堂へとやってきた他の解放軍の面々と、食事を始める。酒を飲む人間がほろ酔いになり始め食堂もそれぞれ会話に花を咲かした頃だ。
ティルの隣に一人の青年が腰をかけた。ビクトールと談笑していたティルは、視界に金色の長い髪が視界に移ったところで会話を止める。
彼は解放軍に入る前から共におり、そして従者の一人であるグレミオだ。
「遅かったね?」
「ええ、坊ちゃん。少し用事がありまして。」
そう言う彼の笑顔は何処となくいつもより嬉しそうで――それでいてどこか不安そうだと、伊達にグレミオを乳母として長年育てられていないティルは察したのだが、その時は特に聞くことはしなかった。 使用人という立場でもティルにとって彼は家族の一人であり、彼にも色々と思うところがあるのだろうと思ったのだ。
どうしても不安そうであればその時に聞いてしまえばいいし、それに何処となく嬉しそうということもありそう深刻な問題でもないだろう。そう結論付け、ティルは再びビクトールとの会話に戻っていったのだが―――ふと会話が途切れたときティルの脳内に一人の少女が浮かんだ。昨日出会った彼女は 目の前の食事をそれは美味しそうに食べていた。相当空腹だったのか、見てるこちらも思わず微笑んでしまいそうな姿である。
その彼女は色々と、異色を放っていた。容姿も立ち振る舞いも普通の街の女の子と変わりないだろうに、どこか違う風にティルには思えたのだ。なぜだろうと考えて、彼女の行動一つ一つが 面白いのだとティルは思った。一つ一つがティルのつぼを擽るのだと。昨日は何度笑ったことかと思い出し、ティルはつい思い出し笑いをしそうになった。
その彼女は今日からこの城で働いているはずなのだが――とそこまで考えてティルは彼女が心配になった。昨日見た限りは、特に人付き合いが不得意というわけではなさそうであった。しかし、初めての場で彼女は大丈夫だろうか。思い出してみればティルと初めて会ったときはどことなく緊張した様子だったし、解放軍に行く時もどことなく不安そうな面持ちだった。
そう考えているうちに既にティルは食堂内を見渡していた。この城にはそれなりに人数もいることから、テーブルはいくつかに分かれている。そしていつの間にか家事手伝いの人々は家事手伝いの、といったように決まったテーブルにつくようになっていたのである。
そのいくつかのテーブルの一つ、比較的若い娘たちの多いテーブルに彼女はいた。
隣の彼女より1つか2つ上の娘に声を掛けられ彼女は曖昧に笑っている。昨日見せていたそれとは違うそれに無意識にティルの眉を潜められた。やはり、彼女は緊張しているのだ。
確かに昨日の今日で溶け込めるはずがない。それは本人次第で、他人は手出し無用と言えばそうであり――ティルも分かっているのだが、それでもどうしても心配の念が消えない。
しばらくは食事をする振りをして彼女を盗み見していたのだが――ふと、彼女の頬が緩んだ。それは昨日見た笑みと、似たものだった。
誰かと話をしているわけではない。けれどグラタンを口に含んだときに頬が緩んだのをティルちゃんと見ていた。思い出されるのは昨日の様子。実に美味しそうに食べるその姿。
緊張していても料理が美味しいのか、食べるとその頬が緩むようだ。次々にグラタンを口に運んではその度に少し頬を緩ませる彼女を見て、思わずティル小さく笑ってしまった。
するとそこで隣で同じように笑っている人物がいることにティルは気が付いた。横を見ればその人物もティルが笑っていることに気が付いたのかティルを振り返る。
「グレミオ?」
「坊ちゃん?」
そうその人物はグレミオであった。グレミオはティルのその行動に驚いたのか目を瞬かせている。ティルもまたしかりであったが。
お互いに視線を合わせ、それとなく先ほど見ていた彼女へと視線を移し、そこで今度はプリンをこれまた美味しそうに食べている姿を目撃してしまい二人同時に笑う。グレミオは口元を手で覆って、ティルは顔を伏せ拳を強く握り耐えるかのように肩を小刻みに揺らす。
ようやく笑いが収まった頃、グレミオはティルへと向き直った。
「そういえば、坊ちゃんはちゃんを知っているのですか?」
「うん。俺が連れてきたからね。」
未だに笑いの名残で頬を緩ませながらティルは答える。するとグレミオは得心が言った様子で頷いてみせた。
「そうですか。坊ちゃんが。」
「グレミオは?」
「私はマッシュ殿からちゃんのお世話を任されたんです。」
今度はティルが納得した表情をみせる。きっとあの後、城を抜け出した自分のことを聞きにマッシュの部屋を訪れたのだろう。そしてその時いたの世話を頼まれたのだ。
そうなるとマッシュが自分を追い出しを残したことが図っていたかのように思えた。心配性のグレミオのことだ。数時間置きにマッシュの元に訪れていそうだと長年の付き合いで予想が付く。それならば心配させずに城にいてやるか声をかけてから出て行けということになるが――グレミオに言ったら最後、自分も付いていくと聞かない。危険だから私も付いていきます、と。ティルとしては一人で気晴らしをしたいから城出たいのにそれは勘弁してくれといった心境である。
もしもあのままティルが部屋に残っていればきっとその場でグレミオはティルに説教をし始めていた。そうなったらどころではないし自分もたまったものではない。さらには自分の溜まった事務処理は更に溜まっていく。 もティルもマッシュも困ったことになっていただろう。
うーん、さすがマッシュ、と一筋縄ではいかない我が軍の軍師を思い直すのだった。そしてそんなマッシュに一筋縄どころか二つ三つとにかく計り知れないと思われてるのはティルだったのだが。

そこでティルは思考を戻し、未だ不安に思っていたことを口にした。
、上手くやってる?」
まるで父親かなにかのように眉を寄せ、心配を露にするティルにグレミオは顔には出さないもの心の中で多いに驚いた。
彼がこうも感情を露にするのは本当に、近しい者でしかない。だからこそグレミオ嬉しくなった。
つい数ヶ月前に、彼は彼の親友を失った。死んだわけではないのだが、その可能性がないわけでもなく。少なくても今彼は無事なのかどうかもわからないほど行方知らずであり、自然とティルもまた塞ぎがちになった。それに、彼は親友だけでもなく親とも離れ離れになってしまったのだ。
だから彼に近しい人物が現れるのは彼にとっては非常に喜ばしいことである。しかし勿論、に彼らの代替わりを望んでるわけではない。ティルに彼らとは違う、新しい風を、感情を芽生えさせてほしいというのは、乳母として仕えてきたグレミオにとって当然のことだ。多くの人と触れ合い、人は成長していくのだグレミオは思っている。
――だがそれがビクトールなどの付き合いが大分長い者ではなく、昨日出会ったばかりの少女だというのが少し気がかりなのだが。
きっと彼女に対して親心がついたのかもしれないと思い直すグレミオである。
「よく働いてくれてますよ。お料理は上手ですし、私たちも助かってます。この料理のジャガイモの皮剥きだって、全部してくれたんですよ。」
その日の彼女の働きを思い出しながらグレミオ笑顔で話した。まだ1日しか経っていないというのにすっかりがグレミオに懐いていることをなんとなく肌で感じ取り、グレミオとしても嬉しいのだ。
まるで娘ができた心境になる坊ちゃん一筋27歳独身いい男グレミオであった。それでいいのかお前の人生。本人は大層幸せそうであるが。
そんなグレミオとは反対に、ティルは驚いたように声をあげた。
「これ全部!?」
「はい。」
にこにこと、グレミオは答える。するとティルは眉を寄せ気難しそうな表情を作った。
「そんなに頑張ってて大丈夫かな・・・・。」
「・・・・・。」
ティルが何を心配しているのか気づいたグレミオはなんともいえない表情になる。果たしてジャガイモの皮剥きの特訓のため使ったじゃがいも料理に使用したなどと使用人風情がそんなことを言っていいのか。ティルはまったくそういうことを気にしないだろうが、グレミオには少し抵抗があった。 なので何も言えず何ともいえない表情を作るしかないグレミオである。
やがてティルが顎に手をあて俯かせていた顔を上げグレミオを見る。その顔にはやはり心配の色があり、グレミオは本当のことが言えないことに思わず罪悪感を抱いた。
「使用人の人たち同士は?上手くいってるの??」
本当に彼はを心配しているようである。まさかここまでとは。さては本当に親心がついてしまったのかもしれない。坊ちゃんは元から大分大人びたところがあったしと思うグレミオである。
もしここで彼以外がティルの様子を見ていたら大いに驚き、27歳坊ちゃん一筋なグレミオの考えを違うだろ!とすぐさま否定するだろうが生憎誰も彼もお酒や会話に夢中で見ていなかったので何も言うまい。どちらにしてもティルの心境は未だ彼自身無自覚である。その感情が何を示すか誰にもわからない。
「そうですね・・・。あまり喋っているところは見かけなかったのですが・・・・。」
しかしティルの心配そうな表情とは正反対にグレミオは笑顔を浮かべ、グレミオからはティルの延長線に見える彼女を視線でさした。
グレミオの指し示す方向を見る。そこにはやはり彼女がいて。
「でも、彼女なら大丈夫だと思いますよ。」
彼女は先ほどまで浮かべたどこか硬い表情ではなく、ティルが昨日みたような、グレミオが昼間みたような笑みで他の使用人たちと会話に混ざっていた。
「ね?」
グレミオはティルが彼女の笑顔を確認しただろうところでそう言う。ティルはそんな彼に頷き、けれど顔だけは笑顔を浮かべる彼女へと向けていた。


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