Skyting stjerner2-6

快晴の空に、数羽の小鳥が戯れながら飛ぶ。安寧とした静かな片田舎の村で、剣戟の鋭い音が響いていた。
左右同時に切り込まれた剣の片方を、剣に添えることで軌道を僅かに逸らす。力ではは勝つことができない。だからこそ、はラズリルから動きの速さに重点を置かれていた。そのまま身を屈め、相手の懐に入ることでもう一方の剣を避ける。懐に入られた兵が剣を戻すよりも早く、は奥歯を噛める。初めて握った時に重く感じた剣は、今では苦なく振るえる。 握りしめた短剣で、がら空きの手首を切りつけた。赤い血しぶきが地面へ飛ぶ。
兵は呻き声をあげ、体制を崩した。傷は深くはないが、放置すれば後に響くだろう。しばらく痛みに剣は振るえないはずである。地面に滴り落ちた赤い血に怯み、意識が向きそうになる。しかしすぐに視界の隅で抜きみの刃が煌めき、は気を引き締めた。続けざまに剣が宙を切り、姿勢を崩したもう一人の兵の腕を斬りつける。
ラズリルから剣を教わるようになり、気が付けば2年が経っている。初めはモンスター一匹すら倒せず、怠惰な性格から運動神経皆無であったも、今では1人で屈強な兵士を相手することができるようになっていた。
しかし、兵の数は多い。倒してもキリのない兵士達を相手に、は徐々に押され始める。じりじりと追い込まれ、疲労から生まれた隙に、は片方の剣を弾かれ落としてしまった。しまったと思った時には遅い。拾い上げようとした所を、好機と兵士が切りかかってくる。しかしそれは、立ち塞がった者により弾かれた。
晴天の空に映える、鮮やかな赤い胴着。
、大丈夫!?」
一瞬脳裏をよぎった赤とは、しかしよく見れば違う、見慣れた始めたものだ。
こげ茶色の短い髪に金冠を嵌めた少年が、の前に立っていた。――リオウだ。
リオウの傍らには、茶色のムササビ、ムクムクがいる。が兵を相手している間に居なくなっていたムクムクは、兵士へと歯を剥き出し、うなり声をあげていた。若干釣りあがっていても丸々とした瞳と唸り声といい、随分と可愛らしいものだが、威嚇をしてくれているのだろう。やはり動物だから伝えてくれなかったのか。それとも伝えたうえでこうして来たのか、分からないが、は苦笑を浮かべる。
情けない。これがティル達であったら、きっと今頃は上手くやり終えているだろう。比べては、こうして逃がそうとしたリオウに助けられている。酷く情けなく気落ちしていくが、いつまでも沈んでいるわけにはいかなかった。剣を拾い上げ、リオウの隣に並ぶ。
悔しいならば、強くなれば良い。もっと鍛錬すれば良いのだ。は切り替えるように息を吸い込む。
「当たり前!ちょっと転んだだけだもの!」
「うそだー。」
「うそじゃない!」
ムキになって噛みつくに、リオウは肩を竦める。「まぁ、無理はしないように!」
「リオウもね!」
疲労した様子のわりに、勢いの良い返しだ。リオウは苦笑を浮かべながらも、隙なく両手にもつトンファーを構えた。
仕切り直しだ。顎を伝う汗を拭い、もまた改めて双剣を握る。僅かなやり取りの間にもリオウが突破した道は塞がれ、にじりよりながら周囲を囲んだ兵士に達は自然と互いに背を合わせた。
年若い一人の兵士が切り込めば、残りも一斉にかかってきた。
まず標的にされたのは、あとから現れた相手としては未知数のリオウだ。油断なく振るわれる剣を、鳶色の目を細め冷静に見据え、リオウは見事表面が加工されたトンファーで払う。 しかし、そちらを気にするまもない。眼前に迫った兵に、は剣が振るわれるよりも早く懐に入り込み、容赦なく剣の柄で顎に打撃を加える。脳震盪を起こした兵の緩んだ手を続いて叩き、剣が地面へと落ちた。安堵する間もなく、の横には既に武器を振りかぶる兵がいた。――間に合わない。身を翻し、刀身を押さえる時間はなく、は右手に持つ剣を兵へと投げる。相手が怯んだ隙で充分だ。肉薄し、続けざまに手首を切りつけ、だめ押しに肘で打ち込めば兵は獲物を手放した。
ムクムクは兵士の足元で小柄な体を活かし素早く動き、攪乱させている。だがやはり味方が一人と一匹増えたものの、息つく間もなく襲い掛かってくる兵士は多勢に無勢である。こんな時こそ真の紋章を使うべきか。
の脳裏に浮かんだ考えは、すぐに取り消された。使ってしまえば、必ず彼等は来る。
トランの戦が終わった後、旅の途中で紋章を使う事があった。だがは、その後の事を軽く考えていたのだ。戦が終わり旅をしていれば以前のように、ハルモニアからの刺客にもばれず、来る事はないだろうと――。
しかし、一度気付いたハルモニアは決して逃すことはなかった。それは自身の紋章が、かつての帝国の宮廷魔術師ウィンディ曰く『変革者』の工の紋章だからなのかは分からないが。そして追いつかれたハルモニアの刺客に傷ついたのは、平和ボケしたではなかった。刺客の気配を察してを庇った、ティルだ。
傷ついたティルをは今でも鮮明に思い出せる。そしてようやくその時、理解したのだ。
この紋章は、周りを巻き込む。戦時中、ハルモニアからの刺客に警戒して同じ部屋で寝ると言って譲らなかった彼らを、は大げさだと、過保護だと思っていた。しかしそうではなかったのだ。知らない所で、彼らはでは気付くことのできない刺客を相手していた。その頃、そこそこモンスターを倒せるようになったでも、ハルモニアの刺客には動くことも、気づくことすら出来なかった。ティルやラズリル達同様、次元が違う存在だと、はっきりと肌で感じたのだ。だからこそ周りは愚か自身の身すら守れないは、使うべきではない。紋章に頼ることは出来なかった。
再び兵に押され始めたとき、背後から新たな声が響く。
「え!え!え!うそうそうそ!!」
思わず兵を相手しながら、声のした方へと視線を向ける。リオウに遅れて、道場から出てきたのは一人の少女だった。
動きやすそうなズボン履いた、活発そうな少女だ。肩で切りそろえられた茶色の髪につけた、ねじった桃色のヘアバンドが唯一の装飾品だった。少女の大きなこげ茶色の目は、こぼれ落ちそうなほど見開かれている。忙しなくリオウと兵士を見やり、兵と戦うリオウの姿に驚いたようだった。
容姿から、恐らく話に聞いたリオウの義姉であるナナミだろう。そこへ兵達の方からも、新たな声がした。
「久しぶりだなリオウ。」
男の声に、向き合っていた兵達がぴたりと動きを止める。しかし剣は鞘に納めず、隙なくこちらに構えたままだ。
兵士達が道を開けると、合間を縫って一人の男性が現れた。男の姿に、動揺して動けずにいた先ほどの少女、ナナミが声をあげる。
「ラウド隊長!どういう事ですか!!」
男は、例のラウドであった。
リオウ達少年兵隊の隊長であり、騙し少年達を殺した男だ。
年は30歳ほどだろうか。金色の髪は前髪で撫で上げている。眉間に皺を寄せているが、ラウドはナナミの言葉に薄く笑みを浮かべた。
「どういう事も何も、都市同盟のスパイの義弟君を捕まえにきたんだよ。」
「よくもそんな見え透いた嘘を・・・。」
ラウドの物言いに、思わず眉が寄る。隠すことのない嫌悪も露な見知らぬ少女に、ラウドは傍にいる兵へと尋ねた。
「こいつは?」
「それが・・・先ほどから我々の邪魔を・・・。」
兵の言葉にラウドは頷く。次の瞬間、声を張り上げた。
「こいつは都市同盟のヤツだ!だからリオウのヤツを庇ってるんだ!こいつも捕まえろ!!」
「なっ・・・!」
ラウドの言葉に、はリオウのように声をあげる事はしなかったが唖然とした。リオウから聞いた話から男がいかにもやりそうな手口だが、こうも鮮やかなほど目の前で嘘を吐かれてしまうと、やはり驚きを隠せない。
「ラウド隊長・・・!!」
「あまりてこずらせないでくれないかな。隊長と部下のよしみで。」
睨むリオウに、ラウドは笑みさえ浮かべながら言う。ラウドは共に連れて来た新たな兵に指示をすると、達を包囲した。
「リオウ!!」
兵に囲まれたリオウに、ナナミは咄嗟に腰帯から垂らしていた棒を手に取る。三本の棒を鎖で一直線になるように連結した武器、三節棍だ。
増援の兵の数の多さに動けずにいるリオウ達へ、ナナミは考えるまでなく助けに向かった。だが兵へと振り落とした攻撃は避けられてしまい、ナナミまでもが兵に囲まれてしまう。
徐々に幅を狭める兵達に、達は成すすべもなく、捕らえられてしまったのだった。


「リオウ!ナナミ!まで・・・!?そっちも掴まったのか・・・!」
兵士たちに連れられ、兵舎の地下へと達は連れていかれた。かび臭い石の牢には、既に見知った姿がある。ジョウイだ。
隙なく結われた薄い金髪の長い髪が、僅かに乱れた様子から彼も抵抗したのだろう。ラウドに連れてこられた達を、ジョウイは唖然とした表情で見た。最初は目を見開いたものの、すぐにナナミが眉を下げる。
「ジョウイも捕まってたんだね・・・・ねぇどうしてスパイだなんてことになっちゃったの?」
「教えてやるよ。」
そう言ったのは、達をこうしてここまで連れてきたラウドだ。
牢へと押し込められたやリオウ、ジョウイが睨むのを気にせず、彼はのうのうと言う。
「しかし、あの急流に飲まれてよく生きていたもんだな。」
「なぜ、僕達を・・・都市同盟の奇襲というのは・・・それにあの男は?」
眉を潜めたジョウイの言葉に、ラウドは一瞬、視線を落とした。
「すまんな、リオウ、ジョウイ。あの方、ハイランド王国の皇子ルカ・ブライト様には大きな野望があるのさ。それにな、俺にもちょっとした野望がある。」
そう言って顔をあげたラウドは、やはり達の事等、その野望の為の些細な犠牲のようだと考えている顔であった。ジョウイが首を振る。
「王家の人間が何故・・・・。」
「ルカ様の野望のために、生贄が必要だったんだよ。都市同盟の奇襲によって少年兵でつかれれた王国の部隊が全滅。
この知らせは王国の民の怒りをあおるのに十分だったわけさ。どうだい、お嬢ちゃん、都市同盟ってのは酷い奴らだと思わないか?」
ラウドの問いに、ナナミは視線を落としながら答える。
「そ、そりゃあ・・・リオウやジョウイが都市同盟に、って思ったら許せないと思うけど・・・でも、それは知らなかったから・・・。」
「その通りさ。バレなきゃ嘘も真実になる。」
確かにその通りである。だがやはり、彼は外道であった。
ラウドは視線のきつくなる達に、背を向けて続ける。
「ルカ様が目的を果たす為には戦乱が必要なんだ。そして俺にも大きな目的がある。こんな田舎の少年兵の隊長じゃなくて、もっと金の入る地位という目的がな。
その為にはお前らには憎むべきスパイとして死んでもらわなければならん。本当のことはその胸にしまったままな。」
「そんな、そんな馬鹿なことってないよ。」
ナナミが眉を下げ、弱弱しく呟いた。ジョウイは拳を握り締める。
「そんな・・・そんな事のために仲間を・・・みんなの命を奪って・・・。」
目の前で仲間を殺され生き残ったジョウイ達は悲痛な面持ちで、奥歯を噛み締める。「・・・戦を。」
その時、呟かれた微かな言葉に、ラウドが眉を潜めて振り返った。
「戦争を、何だと思ってるんですか・・・!」
呆気ないほど簡単に、戦争は優しい日常を奪う。
軍を勝利に導いてくれた、どんなに優しい人も、最後まで人を助けるために人を殺める、そんな矛盾に苦悩していた。
解放軍が失ったものは、数えきれない。もまた、微笑みを浮かべて看取ったその人や、いくら待っても帰ることのない時間を、決して忘れることはない。これ以上失わせないと、握った剣で見た戦場は、想像以上に凄惨だったのだ。
三人が三人、視線を落とす中、はラウドを睨み付けた。目的の為に戦乱を起こすなど、馬鹿げている。そんな事はあってはならない。
それは先の戦を経験し、絶望を何度も経験しただからこそ、感じる怒りだ。怒りは青い炎のようであり、静かに怒り震えるに、ラウドは一度息を詰まらした。そうしてややあってから彼は言う。
「すまんな・・・。今の俺にはそれしか言えんよ。さぁそろそろ時間だ。」
階段を降りる甲冑の音ともに、兵がやって来ると準備の次第をラウドへと耳打ちした。ラウドは頷くと、達に向き直る。
「じゃあな、三人とも。面倒な裁判はサービスしといてやるよ。そっちのお嬢ちゃんも、日取りが違うとはいえ、いずれ同じ運命だ。」
「・・・ちきしょう・・許せない・・・。」
軽々しく言ったラウドに、ジョウイが込み上げる怒りを堪えながら呟いた。


都市同盟のスパイと、彼等を唆した都市同盟の者として、達は縄で縛られ処刑場へと連行された。ナナミは一人主犯ではないことから、別の日取りだという。必死に義弟や、幼馴染みが連れていかれるのを止めようとしたが、兵士に取り押さえられてしまった彼女の目は、涙に潤んでいた。
街の者達が非難の目で見てくる。ナナミだけでなく、幼い頃から世話になった者もいるだろう。今はラウドの言葉に騙され、裏切られたと憤っている。
故郷は安心して、帰るべき場所だ。余所者で、町を知らないはまだ良い。しかし故郷で彼等は今、住民から罵倒と、小石を投げつけられていた。肩を落とすリオウ達の背を、は悔しそうに見た。まだだ。この場をやり過ごすには、いくら回避したいといっても、もう紋章しかないだろう。しかしタイミングを誤ってはいけない。拘束が解けたとしても、人が大勢いる場所では、再び取り押さえられてしまう。人が減り、武器がない現状でも、力で押さえつけられずに逃れる、そんな隙を狙わなければならない。ははやる気持ちを抑え、好機を狙う。
町の中心を通り、外れにある処刑場へあと半分もない所まで来た。そこへ、一つの馬車が脇で止まった。窓から女性が顔を出す。
ぬばたまのような黒の長い髪に、桜色の唇、整った顔立ちの女性は、縄で連行される達を見て眉を寄せた。
「まだ、子供じゃない・・何ゆえにスパイど・・・・。」
それを聞いたジョウイが反射的に女性を睨み付けた。
「僕は無実だ!」
「何を言うか!この薄汚い裏切り者が!お前らのせいでどれだけの命が・・・」
「お止めなさい。」
すぐさま声を上げた女性の従者を、女性は静かに遮った。従者は僅かに眉を寄せる。
「皇女様・・・。」
「皇女?」
従者の小さな言葉を耳に止めたジョウイが、先ほどの勢いを消し、しかし鋭い目でゆっくりと女性を見上げた。
「では、覚えて置いてください・・・僕とリオウは、この国を裏切ってなどはしてません。
この国が僕らを裏切ったんです。」
一度目を伏せ、ジョウイは女性を見上げた。
「そのことを、僕は許さない。決して・・・。」
まるで貴方を憎んでいると言った口調のジョウイに、従者が顔を真っ赤にして叫ぶ。
「なんてことを!貴様!!誰にむかって言っていると・・・。」
「いいのよ、行かせて上げなさい。」
女性は従者を止めると、再びジョウイへと視線を戻し言った。
「どうせあとしばらくの命なのでしょう・・・。」
その言葉を最後に、止められていた馬車は走り出した。



「誇り高きハイランド王国軍、ユニコーン隊にありながら、いやらしい都市同盟に通じ栄光ある我が軍の名に泥を塗った二人、そしてその二人を唆した都市同盟の輩の処刑を始める。言い残すことはあるか?」
処刑場が夕日に染まる中、ラウドは尋ねる。地面に穿たれた木の丸太に縄でくくりつけられたジョウイが、睨みつける。
「そんなものはない。」
同様に拘束されたとリオウも無言で睨みつけるだけであった。しかしラウドは笑みを浮かべる。
「そうかそうか。観念したか。」
見当違いも甚だしかった。ラウドは空へと視線を向ける。
「ん?見てみな夕日だ。あれがお前達には最後の夕日さ。
まぁ、俺にとっちゃあなんの変哲もない夕日だ。この日を境に出世街道まっしぐらかと思うと感じるものはあるがな。」
そうして夕日を眺めながら、彼は語り始めた。
――好機は今しかないだろう。近くには、ラウドしかいない。ラウド一人ならば、拘束を解けばこちらは三人いる。問題はないだろう。難点は他の兵は離れた場所で待機していることだ。 しかし今使わなければ、達は理不尽な思惑により処刑されるだけだ。 待機する兵士のなか、どこか、一番兵が手薄な場所は――。忙しなく辺りを見るは、いち早く視界の隅で動く影を見つけ、目を瞬かせた。
「まったく、どういうわけだかこんな田舎街の餓鬼ばっかりの部隊の子守役。わが身の不幸を嘆いたが、神様ってのはいるんだな。
これを足がかりにしてあとはとんとん拍子に出世してゆくゆくは近衛隊長辺りの地位をつかんで・・・、」
一人夕日に黄昏ながらそう自身の野望をラウドは語る。
しかしそこで、彼の話を遮る者がいた。
「残念だが、出世街道は諦めな。」
そう言うと、話に入った者は達を縛り付けていた縄を一閃する。
驚きに目を見張るラウドは、慌てて背後に控える兵士に振り返った。しかし、処刑場で控えていた兵士は一人もいない。あれだけ多くいたにも関わらず、全員が昏倒させられ、地面に倒れこんでいる。最後の兵士の横っ面を鞘に入ったままの剣で殴り、気絶させた大柄の男が、剣を担ぐ。
「へっへっへ、やっと追いついたぜ。正義の味方、ただいま参上ってところかぁ?」
達を助けに来たのは、フリックとビクトールであった。驚きに目を見開くリオウ達と違い、は頬を緩ませる。
ビクトールが元から乱れた髪を掻きながら言う。
「まったく、勝手に出て行きやがって、驚いたぜ。」
「なぜ・・・?」
ジョウイが呆然と呟いた。なぜ、確かにそう思うだろう。だが彼らの前でそれは無意味に近い。なぜ、どうして、理屈は関係ないのだ。
ビクトールは心外だとばかりに眉を潜めた。
「あーん?言いっこなしだぜ。お前らは俺が捕まえた捕虜だからな。そう簡単に命を落として貰っちゃ困る。
それには俺達の仲間だからな、な、フリック。」
「うっ・・・そ、そうだな。」
未だ一時期の事を引きずっていたらしいフリックが、顔を他所に向けながら言う。あれからもう2年が流れているか、彼らもまた、変わっているようで変わっていなかった。
改めるようにフリックが一つ堰をして言う。
「こいつ、おせっかいなんだよ。」
「まぁな。ポールの奴にも泣きつかれたからな。あ!待ちやがれ!!」
ポールが、と感動している間に、ラウドがその場から走り出してしまった。慌ててビクトールが追いかけるも、そこが隊長たる所以か、ラウドの足は速い。
程なくして戻ってきたビクトールが、罰が悪そうに言う。
「ちきしょう、逃げられた。」
「こっちも早いところずらかるぞ。」
「ま、待ってください。ナナミが・・・友達が牢に捕まってるんです。見捨てては行けません。」
ナナミもまたスパイ容疑で捕まっているのである。リオウとジョウイ、は顔を見合わせると頷く。
「ナナミを助けにいこう。」
「なーるほど。面白そうだ。最近身体がなまりぎみだからな。」
にやりと笑ったビクトールに、フリックが溜息を吐いた。
「しかたないヤツだな。やっかい事に鼻を突っ込むのはお前の悪い癖だぜ。」
「ようしフリック!リオウ!ジョウイ!!いくぞ!」
「お前が仕切るな。」

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