冬木の地2

DreamMaker2 Sample 眠りについて、どれだけの時が流れたのだろう。
暗闇に揺蕩うような意識は、何度か浮上した。ある時は現代に、災厄を討ち滅ぼす旅に、英霊として彼は顕現した。しかし暗闇の中の時の感覚は曖昧で、それがいつの頃だったのか定かではい。思い返せばつい最近のようにも思えるが、彼が人であった頃から数千年は経っているのだろう。
カムランの丘で生き絶えた彼は、今や人ではない。姿形はとうに朽ち果て、温もりを感じず、光を感じない。それでも彼は穏やかだった。
生前の彼女との記憶は、彼だけのものだ。
時にマーリンの悪戯に怒り、アグラヴェインの雷に落ち込み、とりとめない話の傍ら微笑む彼女との記憶は、彼がたどり着いた理想郷だ。 その手を掴めた、その一瞬が彼の空虚な心に消えることのない灯火を灯す。かけがえのない記憶は色褪せず、例え幾億の月日が流れても薄れない。確かに長い年月は記憶を摩擦し、彼女の声の音色や輪郭も、朧気になっている。
それでも、彼女を忘れはしない。忘れられるはずがないのだ。彼の心は、そこに預けてあるのだから。
暗闇の中、穏やかな夢を繰り返し見る。敬虔するように鮮明に、時には烈火のように苛辣に思い出された。
だから、その声がした時に動いたのは反射的であった。
考えるよりも早く、本能で動く。彼女の声音は長いときを得て、今はもう鮮明に思い出せなくとも、彼女だと、直感が叫んだ。
揺蕩う意識は急浮上して、彼は声のもとへと向かう。
その術がなくても構わない。永遠に喪った彼女が、そこにいるのだ。ならば、自分が用いる全てを、例えそれ以上が必要であっても用いろう。
騎士の誓いは破れない。
彼の誓いは、彼の願いだ。
―――今度はもう、離さない。


***


「そこの男と違って、一般人でしょう!?」
愕然と叫ぶのは白銀の髪をした華奢な少女だ。金茶色の瞳は鋭く吊り上がり、を指さしている。
いきり立つ彼女は、立香達のやり取りを見ていた。マシュは勿論、レイシフト適性がある為入れた一般人の立香も非常に不本意ではあるがカルデアの計画に携わっている。
しかし、彼らと知り合いであるらしい彼女を少女は知らない。親しげな様子から、この地の住民という線はないだろう。焦ったように少女は親指の爪を噛む。
「どうなっているの、魔術の秘匿は・・・!」
「所長、その、先輩は・・・・。」
現代の魔術は秘匿されるものだ。知られてしまえばそれなりの処置をしなければならない。本来ならば神秘の漏洩を防ぐことを第一とする魔術協会に頼み、記憶の措置をしてもらうがこの状況でその方法は難しいだろう。
はブリテンでの生活から魔術というものを知っている。しかし現代の魔術師の組織や仕組みについて、全くと言っていいほど知識がなかった。過去しか知り合いがいないのだから、当然である。
魔術が秘匿されるものということは知りつつも、焦る少女や、慌てるマシュからことの重要さが分からず内心首を傾げた。
銀色の髪をした少女は、生粋の魔術師だ。魔術師は論理観というものは持たないよう育てられる。本来魔術協会もなく、しかも極秘のカルデアでの任務の上で起きた現状に、もっとも取らなければならない措置は自然と導かれた。
「所長、彼女は昨日雇ったばかりの、僕の助手なんです!」
現状を打破したのは、この場にはない人物の声だった。
僅かな邂逅ではあったが、のんびりとした表情を浮かべた青年が、の脳裏に浮かび慌てて辺りを見回すが、辺りは平野や瓦礫ばかりでやはり姿はどこにもない。
声は確かに、ロマニのものだった。しかし姿の見えない青年の声がどこからともなく響き、少女を押し切るように続ける。
「魔術とは関係ない、カルテ整理とか、医療面で手伝いをお願いしたくて・・・。レイシフト実験で人も増えて、これから、忙しくなると思いまして。」
「どういうこと!?私は聞いていません!!
「話そうと思ったのですが、所長、録に話しも聞かず僕をすぐに追い出したじゃないですか。」
言われた節には思い当たるところがあったらしい。眉を潜めたまま、ぐっと少女は押し黙る。
カルデアの一員であれば、問題はない。なんだかうまく言い包められたような心地が残り、腑に落ちない表情を浮かべるものの、少女はそれ以上、ロマニの助手であるらしいにとやかく言うことはなかった。
「とにかく、無事でよかった。」
なんとか、場を凌ぐことが出来た。肩の力を抜いたように、ロマニが言う。銀色の髪の少女が押し黙る視界の隅で、マシュが安堵に小さく吐息を吐くのが見え、は現代の魔術の有様についてはよく知らないが、どうやら知らず助けれたのだと察した。
ロマニ本人の姿は、相変わらず見当たらない。どうにも、彼本人はこの場におらず、カルデアから魔術によって通信をよこしているらしい。本来ならば姿も映し出すことが出来るか、霊脈が安定せず会話しか飛ばせないのだ。
それから、はロマ二や先にマシュ達と合流していた立花達から現状の話を聞くことになる。
この荒れ果てた地は日本の冬木。2004年の過去なのだという。しかしただの過去ではない。本来ならば起きえることがなかった出来事が起きた特異地点で、それにより未来である現代がなくなろうとしているのだという。阻止するためには、この地点での異変の元を解決しなければならない。
出来るのは事故により過去の世界に飛ばされた――レイシフトという――この場にいる者達だけだ。まさかの世界救世である。
マシュの姿かたちが変わったのは、事故により偶然、以前失敗したかと思えた過去の英雄――英霊・サーヴァント――をその身に降ろすデミ・サーヴァント化することが可能となり、人を超えた力を得て、瀕死の傷から回復できたのだという。
サーヴァントは魔力というものを供給しなければ維持できない。それに関しては彼女の傍にいた、魔術適正のある立香が自動的にマスターに選ばれた。
銀色の髪の少女は、オルガマリーといい、カルデアの所長であった。幼くして親を亡くしたことから後を継いだ彼女であるが、彼女自身も優秀な魔術師である。
さてさて、それではといえば。
ついさっき、本人の了承もなくロマニの助手という形に収まってはいたが、残念ながら、何も力のない一般人であった。ラノベよろしく世界救世となればなんかしら力が欲しいところである。
冬木には、既にほとんどの者が息絶え、人ならざるものが闊歩していた。戦うことになるのはデミ・サーヴァントであるマシュ、後方支援のオルガマリー、そしてマスターとしてマシュに指示を出す立香。逃げる。これ以上ないほど不甲斐ない現実である。
姿の見えないロマニの指示により、冬木の地で原因を探す始終、は落ち込んでいた。
逃げることに精一杯で、いつの間にか仲間になっていたこの冬木の地で召喚され、マスターを失くしはぐれサーヴァントであったクー・フーリンが仲間になり、英霊である彼から見たマシュは、サーヴァントとしての力を引き出せていないと、本来の力を引き出す訓練をすることになった所で、思わず隅の方で体育座りをするほどである。役立たずで私は悲しい。
様々な出来事があったが、辺りはようやく夜のとばりが落ちた程度だった。とてつもなく濃い1日である。休息地点と定めた霊脈のある廃ビルの屋上で、それでも休まずマシュは盾を手に意気込んでいる。対するのは濃紺の髪をした青年だ。ゆったりとした淡い色のローブを羽織り、木製の杖を片手に持っている。鋭い目付きに、寛がせたローブから微かに覗く腹筋はバキバキに割れているが、彼はキャスターであった。あの後、仲間になったこの地のはぐれサーヴァント。それが彼である。
「準備はいいか?」
体育座りするの横にはあぐらをかく立香、少し離れてオルガマリーが見学している。マシュとは異なり彼女は人見知りであるらしく、未だ距離感があった。
英霊と対面しながら、マシュは力強く頷く。クー・フーリンが仲間になり心強くとも、人外を相手に戦えるのは他には自身しかいないのだ。決意を宿した目に、クー・フーリンは口角をあげた。
「死ぬ気でやれ。
――じゃなきゃ死ぬぜ?」
好戦的に告げると、彼は手に持つ杖を振り上げる。「そんじゃ、行くぜ!盾の嬢ちゃん!!」
振り上げられた杖は、空で微かな光を纏った。やがて光はルーン文字を浮かび上がらせ、杖に纏わりつく。風がクー・フーリンを中心に舞い上がり、柄先が硬質な音を立てて地面についた。
瞬間、遠目で見学していた達まで軽く電流のような衝撃が走る。床には光を帯びた円形とルーン文字が楔のように走り、クー・フーリンを中心にあっという間に辺りに広がった。
隅にいる達は愚か、広々とした廃ビルの一体から一瞬にして遥か先の広野にまで広がり、ルーン文字は砕け、駆けた光が消えていく。
嵐の前の静けさだった。
唸り声が轟くともに、何もない床から得たいの知れないもの達が這い出てくる。骸骨の姿をした兵は一体、二体と増え続け、やがて思わずは頬をひきつらせた。おいおいちょっと待て。
「な、何を考えているのクー・フーリン!?」
そう思ったのは何もだけではなかった。立香や涼しげな表情を浮かべていたオルガマリーすら焦ったように声をあげる。休息地帯であった廃ビルに次々と現れるのは冬木の地で遭遇する人外のもの達だ。人のいない街を我が物顔で闊歩し、遭遇するなり達を襲ってくるが、この場所には現れない。休めるようにキャスターであるクー・フーリンが感知できなくなる結界を張ってくれたのだ。――まさか。
「こいつらに余裕で勝てるようにならなきゃ、人理修復なんて夢のまた夢だ。」
軽く言うが。屋上に犇めく魔物たちはどう考えてもマシュ一人では手に負えない数だ。
結界を解いた上で、引き寄せられた魔物たちの数は次々に増えていく。救いは辺りにはこの廃ビル以外の建物がなく、クー・フーリンの魔術の影響で次々と眼下の荒野には魔物がひしめいているものの、周囲からの奇襲を気にしなくて良い点だ。
霊脈があり、かつ砦としても使えると目を付けた休息地だが、味方が敵を引き入れてしまえば意味をなさないが。
魔術を使えるオルガマリーが咄嗟にや立香を覆う小さな結界を張りなおしてくれたが、それでも眼前への恐怖にオルガマリーは大分焦っているようだ。
何よりも、盾を手に一人で奮闘するマシュが映る。溜まらず、立香が声を上げた。
「マシュだけ危ない目に会わせられない!俺も、手伝うよ!」
「わ、私も!」
「ちょ、ちょっと!?」
オルガマリーの張ってくれた薄い光を帯びた結界を立香が飛び出る。
少年に押され、もたとえ力になれないと承知しても飛び出していた。後方から、オルガマリーの非難する声が聞こえる。
「礼呪をもって命ずる!」
立香は一般人で魔術師ではない。それでも適性があることからマシュのマスターとなったが、魔術の使い方は分からずにいた。
本来、マスターである立香はサーヴァントのマシュに礼呪をもって力を付与することが出来るが、魔術の扱い方は愚か、魔術回路を理解していない立香には遠くからでは上手く与えることが出来ないでいた。
マシュへと駆け寄りながら、立香は片手を上げ、手の甲に宿る赤い模様の礼呪を使おうとする。
しかし結界から出てしまえば、骸骨兵はもちろんこちらにも向かってくる。立香は上手く振りかぶられる骸骨兵の剣を避けているが、
後から追ったは視界の隅で弓矢を片手に立香を狙う存在に気付いた。
慌てて何かないかと辺りを見回し、足元にころがる小石を拾う。そのまま勢いよく弓矢で射ろうとする骸骨兵へとぶん投げた。
結果として、立香は無事マシュのところまでたどり着けた。小石はいい音を立てて、頭蓋骨に命中したのだ。
ほっと安堵したのは、僅かだ。
窪んだ目がこちらを見た。
「ひぃぃ!!」
ホラーである。加えて、片手に持つ弓矢をこちらに向けているではないか。
何かないかと見渡しても、運よくあった小石は先ほど使ってしまった。矢が引かれ、いよいよは焦った。少しでも離れようとその場から離れる。
目前に差し迫った矢を辛くも避けれたのは偶然であった。逃げた先で金網に背を預け、腕を掠めるだけにすんだは安堵する。後方から金音がしたのはその時であった。
は体が宙に浮くのを感じた。
「あ、」
間の抜けた声が出る傍ら、は眼下を見る。壊れた金網は一足早く眼下の群がる魔の者たちに飲まれていった。

廃ビルの回りは荒野しかなく、奇襲を気にする必要はなく、這い出た屋上の骸骨兵だけに目を向ければ良い。けれど廃ビルの下に広がる荒野には、結界が消えクーフーリンの魔術の余波で夥しいほどの魔物がいる。仮に、もしも辛うじてこの高さから助かったとしても。あの猛攻に目を光らせる魔物に飲まれてしまえば、凄惨な死しかないだろう。どうやっても、助かりそうにない。
一瞬の思考が、眼下の爛々とうごめく魔物の目が合った瞬間よぎる。その思考はに諦めを抱かせるには充分だった。
飛び出た体に、下へと重力が戻る。こんな時、は思うのだ。
――『必ず、生きて。』
そう言って泣きそうな顔をしていた青年は、どうやったって会えない過去の人間だ。
それでも、生きていれば。いつか。途方もなく荒唐無稽で有り得なくても、は自身ですら知らず願っていたらしい。
いつでも死の間際に思い出す青年が脳裏に浮かび、確実に向かう死を他所に、は思った。
――アーサーに、会いたいなぁ。


霊脈が大きく揺れ動いたのは、その時だった。





同時刻、咄嗟に腰をあげた青年の魔力が吸いとられていく。
離れた場所から千里眼で見ていた光景に、魔術を駆使しようとしてはいたもののそれは発動によるものではない。 何もしていないのに強制的に、手段も厭わず魔術回路が繋がっていく。しかし顕現先はこちらではない。マーリンの視る先に術式は拡がっているからだ。マーリンの頬がひきつる。「ちょっと、ちょっと!」
「根こそぎ魔力を持っていくつもりかい!?いや、これくらいで僕の魔力は尽きないけども。無理やり繋げてきて、普通の魔術師なら、廃人まっしぐらだぞ!」
こんな暴挙なことを仕出かすのは、彼女が関わった途端、普段の優等生面が剥がれこちらが予想できなくなる動きを見せるあの男に違いない。
あちらの彼女の王にして、天敵でもある彼はこの世界にはいない存在だ。あり得ない存在は、縁だけたどり着き、現れようとしている。大方、座で彼女の存在を微かに感知したのだろう。彼の持つ直感はマーリンすら叶わない一級品である。
これで彼女は安全だ。とはいってもさしものマーリンもこの強引なやり方には不満がこぼれた。
「彼女に魔力がないからって、魔力は全部僕持ちかい。強引だなぁ、君は!」
なんたって仮にも導き手であり師匠である存在を都合の良い魔力タンク扱いである。
あの王は本当に。知ってはいたが。
ほとほと、横暴な王にマーリンは珍しくも頭痛を覚えた。
「こんなことするのは――彼だけだろうね!」




「なんだ、このオドの揺れは・・・!?」
少女がビルから落ちかける姿を視界におさえ、咄嗟に助けようとしたクー・フーリンは、大気を揺らすほどのオドに目を見開いた。急速に集まり、今まさにこの場に現れようとしているとんでもないものは、クーフーリンの呼び出した骸骨兵などではない。
「!しまった!」
一瞬の逸れた気が、少女を助けるタイミングを失った。
間に合うか。急ぎ呪文を口にしようとして――それは現れた。
もともと、休息地点には霊脈のある場所を選んでいた。カルデアの者達との通信を安定させる為であり、霊脈を元に他のサーヴァントを召還し、力を借りるためで為である。召還サークルを敷いたものの、適正はあっても生憎とほぼ一般人である立香には魔術回路も魔力の扱い方も分からず英霊を呼び出すことはできなかったが。その召還サークルが、勝手に作動していく。円を描いた青白い光が三重に浮かび上がる。渦巻く風は強まり、瞬間、辺りを眩い光が覆った。
屋上一体を白ずませ、その場には一人の青年が立っていた。
収まりつつある風が蒼い外套を靡かせる。銀色の鎧を身に着けた美丈夫に、クー・フーリンは見覚えがあった。
今の彼ではない彼が邂逅したかの青年王。束になるほどの伏せられた睫毛上がり、エメラルドブルーの目が開いた。次の瞬間、青年はその場から消える。
クー・フーリンは英霊として卓越した身体能力からすぐに彼を捉えられたが、立香やマシュ達には彼の姿すら捉えられていない。召喚サークルが作動したその場には誰もいないと不思議がっているが、違う。
青年は一足で屋上の端まで向かい、躊躇うことなくそのまま廃ビルから飛び降りたのだ。視界に写る少女へと手を伸ばす。

無意識に目を瞑っていたは、体を包んだ温もりに驚いて目を見開いた。視界に広がるのは銀色の鎧だろうか。近すぎてあまり理解できないが、どこかで見たことがあるような。風圧に煽れながら驚いて顔を上げようとしたは、しかし体が強く抱え込まれ、動かない。
「大丈夫。」
頭上から降りた声を、やはりはよく知っていた。
鼓動が脈打つ。あり得ない。あり得るはずがない。聞くだけで安堵する、力強く、それでいて穏やかなその声の人物をは彼しか知らない。
地上が近づいていく。不思議と恐怖は微塵も湧かなかった。ようやく抑えられていた片手が離れは顔を上げようとする。
金糸のような髪が視界に映る。蒼い外套に身を包んだ、端正な顔立ちの青年だ。
眼下を焦ることなく海のような蒼い目で見据えた青年に、無意識の内にの両目に涙が浮かんだ。

次の瞬間、妖精の加護を受けた剣が振り下ろされる。
轟音が轟き、辺りには砂塵が舞い上がった。


辺りが砂埃に覆われる中、は視界を闇に覆われていた。
頭から被らされたのは彼の外套だろう。砂埃は愚か、突然のことには慌てた。その間にも、青年は生き残りつつも視界の悪さに混乱する魔物の集団に斬りいる。
初撃で数は失われたが、まだ辺りには多くの魔物が蠢くほどいる。それでも魔物たちは振るわれる刃を捉えることもできない。もともと不可視の剣ではあるが、もはやその次元ではない。
斬り捨て、砕き、潰し、躊躇なく魔物を倒していく。次々と倒してく青年には、魔物の血痕すら降りかかることはなかった。青年はバーサーカーもかくやという程の容赦ない動きで、魔物を屠っていく。無表情のまま、見る者を凍り付かせるような冷徹な動きで、青年はあれだけ辺りに蠢いていた魔物を僅か数秒で一掃させた。

だた広いマントを頭から外したが辺りをようやく見渡せる頃には、辺りには魔物一匹いなかった。
驚くだったが、佇む青年の姿にそれどころではなくなる。
もう二度と会えるはずのない、死の間際に思った人だ。だが信じられない事に、目の前に彼は居る。
青年が振り返る。先程まで魔物を相手していたような鬼人のような動きは収まり、彼本来の気品すら感じる優雅な動きだ。
の前まで歩み寄ると、彼は穏やかな笑みを浮かべ、告げた。
「僕はセイバー・アーサー。
君を守る、サーヴァントだ。」


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